ニュースの概要

Fifth Third Bankと遺言作成サービスのTrust & Willが、Finovateの「Best Fintech Partnership」に選ばれました。両社は2025年に提携を始め、Fifth Thirdは米国の大手銀行として初めて、顧客全員に弁護士の確認を経た遺言作成サービスを無料で提供しています。遺言や相続の準備は、従来、費用や手続きの分かりにくさから後回しにされがちでした。今回の取り組みは、銀行口座や資産管理と同じ接点で備えを促し、特別な法律手続きを日常の金融行動へ組み込む動きとして評価されました。

引用元: Fifth ThirdとTrust & Will、相続・遺言のデジタル化でFinovate賞を受賞(Business Wire)

分析・見解

受賞の核心は遺言を銀行利用の標準機能にしたこと

この提携の新しさは、遺言作成の画面をオンライン化しただけではない。銀行が顧客との既存の接点を使い、相続準備を口座や資産管理と同じ生活上の課題として扱った点にある。遺言は必要性を理解していても、弁護士探し、費用、書類作成への不安が壁になりやすい。信頼される金融機関から無料で案内されれば、着手までの心理的な距離を縮められる。

無料提供は利用の壁を下げる一方で質の説明が要る

費用をなくすことは入口を広げるが、利用者に合う内容まで自動的に保証するわけではない。家族構成、居住地、資産、事業承継の事情によって、必要な書類や判断は変わる。弁護士承認済みという説明も、個別の法律相談と同じ意味ではない。サービスの対象範囲、対応地域、作成後に専門家へ相談すべき状況を明確に示すことが、信頼を維持する条件になる。

銀行は資産の把握と家族への引き継ぎをつなげられる

銀行は預金や住宅ローンなど、顧客の資産形成を支える接点を持つ。遺言サービスが加われば、資産を築く段階だけでなく、誰にどう引き継ぐかまで支援できる。ただし、口座情報を遺言作成に自動転用する場合は、同意の取り方とデータの用途を厳密に分ける必要がある。便利さを理由に個人情報を過剰に集めれば、金融機関への信頼を損なう。

作成後の更新支援が相続準備を定着させる

遺言は一度作れば終わりではない。結婚、離婚、出産、転居、資産の変化に応じて内容を見直す必要がある。銀行は住所変更や口座の見直しといった既存の手続きに合わせ、定期確認を促すことができる。今後の競争軸は作成画面の使いやすさだけでなく、変更を思い出させ、必要なときに専門家へつなぐ継続支援へ移るだろう。終活を単発の販売機会ではなく、長期的な顧客支援として設計できるかが問われる。

ビジネスへの影響

銀行は無料特典を顧客関係の強化策として設計する

金融機関にとって、遺言サービスは直接の手数料収入より、顧客との接点を深める施策として評価するのが現実的だ。導入前には、遺言作成の完了率だけでなく、案内を見た割合、開始から完成までの離脱箇所、利用者の問い合わせ、顧客満足度を測る。無料提供は利用者数を伸ばしても、支援費用や苦情対応が膨らめば持続しない。まず対象顧客や地域を絞って試し、利用状況と運用負荷を確認してから広げる方法が有効だ。

外部サービスとの契約で責任と情報管理を切り分ける

提携先を選ぶ際は、作成書類の法的な位置付け、州や地域ごとの対応、本人確認、保管と削除の方法を確認する。銀行の画面から外部サービスへ移る場合、顧客が誰に情報を渡しているのか分かる表示も欠かせない。契約では障害時の対応、苦情の引き継ぎ、サービス終了時のデータ移行まで定めておく。法律相談が必要な利用者を適切な専門家へつなぐ仕組みも、提供範囲と責任を誤解させないために重要となる。

企業は作成件数より継続的な備えの質を測る

保険会社、雇用主、資産管理会社も、従業員や顧客の生活上の備えとして同様の連携を検討できる。ただし、利用を促すほど、本人の意思を尊重し、家族や勤務先に内容を見せない設計が必要だ。評価指標は遺言の作成数だけにせず、内容の見直しが行われた割合、専門家への適切な紹介、利用者が手続きの範囲を理解したかも含めるべきだ。相続準備を日常業務に組み込む価値は、書類を作らせることではなく、変化に応じて備えを更新できる状態をつくることにある。

関連記事